2015年7月 Archives

弁護士板橋です。

本年度も,群馬県庁にて,「高齢者虐待対応現任者研修」内の,「高齢者虐待防止法と市町村の責務」について講義をして参りました。

テキストはこちら。

この現任者研修は,毎年行われており,新人の方のための研修でもあります。今回は,自治体職員,地域包括支援センター職員の方々,約90名が参加されておりました。

私の担当した講義では,現場の方々が虐待対応するにあたり,法律上どのような権限や責任が規定されているのかを学んでいただきました。

 

 平成25年度の群馬県内の養護者による高齢者虐待の統計はこのとおりです。

 これは,群馬県が把握した件数ですので,統計に表れない潜在的な虐待は,この何倍か存在していると思われます。

虐待は,様々な背景事情から発生します。養護者の介護負担の増加,介護による社会からの孤立,経済的問題,認知症の無理解,地域の希薄化,等々。虐待は非日常の特別な問題ではありません。

虐待防止法が,養護者支援を謳っているように,養護者による虐待の場合,多くのケースで養護者への適切なフォローが必要になります。多くの高齢者は,自宅に戻りたいのです。

 各自治体における,市民への啓発・予防対策・早期発見・適切な対応等が重要な施策となります。虐待に携わる様々な機関が連携し,住みよい地域を作っていくことが必要でしょう。

 

さて,今回の講義中にいくつか質問をさせていただきました。

そのうちの1つが「成年後見制度の研修を受けたことがあるか?」になります。挙手をされた方は1~2割。この割合,多いか?少ないか?

正直なところ,非常に少ないと言わざるを得ないでしょう。

 

高齢者虐待の対応において,措置入所等による養護者との分離が行われることが多くあります。その際,高齢者の判断能力が低下している場合,措置から契約への切り替え時に,成年後見人が必要となっていきます。

そして,高齢者虐待の場合,市町村長申立が原則になります。

そうすると,現場の地域包括職員が,成年後見制度について一定の知識と経験を有していないと成年後見制度へ繋げることが困難となります。是非とも成年後見制度についても充実した研修・勉強をお願いしたいところです。

 

話は変わりますが,日本弁護士連合会における,高齢者・障害者権利支援センターでは,地域包括支援センターと各弁護士会・法テラス地方事務所との連携を模索しております。これは,地域包括支援センターにおいて,法的対応の必要性が高まっていることが背景にあります。

本ブログでも度々述べておりますが,連携を深めるための一番の問題は,弁護士側が福祉分野・福祉現場を知らなさすぎる(多くの弁護士が地域包括支援センターの存在も知りません)という点だと思っております。

 

将来的目標は,全県下で連携が広がること(広げること)です。

まずは,できることから連携を広げることが大切でしょう。

弁護士法人龍馬は,今後も積極的に高齢者福祉に取り組んで参ります。

群馬県内の地域包括支援センター及び行政担当者の皆様,顔の見える連携体制を作っていきましょう。

 

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/

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