2010年7月 Archives

「龍馬ネットワーク」

|

100717_1257~01.jpg
1.問題意識
 (1)死んだ後の状況~争続~
    弁護士として,遺産分割の争いを目の当たりにしている。当事者の精神的疲労は並大抵のものではない。法律による基準はあるが,個々の家族の人生を加味した基準ではない。むしろ,相続分や遺留分は,争うための根拠となる。ましてや,寄与分や,特別受益などは,過去のこまごまとした人生を掘り返さなければならず,それは,争いを助長する種子でもある。肉親であれば些細な出来事の積み重ねがなおさら争いの事情となる。この争いの解決は,しがらみのなかゆえ,手続きの時間を倍加する。
 (2)死ぬ前の状況~胃ろう~
   ターミナルケアの現場で身体じゅうにチューブやセンサーが取り付けられた重症患者のことを『スパゲティ症候群』と呼ぶ。フィールドワークをしながら,「胃ろう」状況をより衝撃的に感じた気持ちは,このネットワーク構想のひとつの核になっている。「人が死を受け入れる姿」として幸福だとは思えない。
   医療関係者の間でも,高齢患者の終末期に胃ろうを行うことを疑問視する意見が相次いでいる。水分の過剰投与により身体がむくんだり,栄養剤が食道を逆流して肺炎を起こしたりする危険性が高い。しかし,本人の事前指示がなければ,標準的医療行為として「胃ろう造設」処置が行われてしまう現実がある。

2.手立て
 (1) 上記問題の解決策として,私は“快適に老いる!”~かかりつけ  弁護士を身近に~を冊子として提示した。簡潔に述べれば,次の二点となる。
   ①遺言
    相続争いをしないための方策のひとつとして,「遺言」をしっかり残しておく。そして相続人の間に介在させることである。
  ②事前指示書
    自分がしっかりしているときに,終末期に延命か,あるいはケアかの判断を事前指示書として作成をしておくことである。
  (2) 遺言は法的問題ゆえ,弁護士である私の職務領域であった。だから,弁護士限りで十二分に対応可能である。依頼者の方の意思とともに,関わりある方々を含めて,配慮し将来の法的解決を設定できた。
     ところが,事前指示書の作成は,結局,その方の人となりや家族構成,人生観を知らなければならない。そして他界するまでの長いつきあいとなる。それは,法的問題の解決だけではなく,身体の問題,福祉の問題,その他トータルな問題に取り組まなければならない。つまり,弁護士一人が解決できる問題ではなく,医師,社会福祉士,司法書士,税理士の方々の協力なくして,おいそれとその人自身の指示書であると表に出すことはできない。

3.立ち上げ
 (1) そこで,龍馬ネットワークを立ち上げた。少なくとも,依頼者が人生を託す相手として,このネットワークは強力な味方となろう。身近に法のプロ,医療のプロ,福祉のプロ,法務手続のプロ,税務のプロがいてくれているのだから。
    そして,自分が動けないときに龍馬ネットワークが代理として動いてくれればこんな心強いことはない。
  (2) 実を言えば,それぞれのプロは,自分の領域に関して,説明義務を果たし,専門性を発揮してきた。しかし,依頼者本人の人生全体からこれがよいとしてサポートしてきたか否か判断できないできたのである。つまり,その人本人の人生観を抜きにした専門的判断による対処だった。
 (3) 目指すべきは,その人本人に対するトータルケアである。せめて,人生を終えようとしている方には,その人なりの価値感による終わりの生き方があるべきだから。

4.2010年7月24日第1回龍馬ネットワークの会開催
    当日,龍馬ネットワークのメンバーがぐんま事務所にて一同に会する。私の目指すべき途を各メンバーに伝えよう。それぞれのプロだから,おいそれとは納得してはくれまい。ただ,このつきあいの中で,徐々にであれ行く先がはっきりしてくるであろう。その折に触れ,次の顔合わせ会が開かれればよいと願っている。