2008年12月 Archives

異業種間交流

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高齢者虐待に対応する専門家チームを結成するため、社会福祉士の方々や司法書士

の方々と協議を重ねている。

たとえば、高齢者の年金に寄生している子が、当該高齢者の経済的状況を圧迫して

いるため、市町村長による成年後見申立を拒絶した場合、従来、申立をすることは

できなかった。

しかし、これが言わば、経済的虐待事例に該当するならば、専門家チームによる認定

を経ることにより、市町村長による成年後見申立が容易になる。さらに、後見人の受け

皿も確保される。それ故、身上監護の専門家である社会福祉士と、第三者による財産

上の管理ができる法的専門家である弁護士、あるいは司法書士がチームとなる必要

性が認められている。

協議の結果により、弁護士会、社会福祉士会、司法書士会の三会が一同に介し、

権利擁護実施要項及び協定書の調印となれば、それなりの社会的インパクトがあろ

う。ところで、弁護士同士での話し合いの機会は、当然多いのであるが、思考パター

ンが共通していることや馴染みであるため、気楽である。他方、異業種の方々との

協議では、新鮮であり且つ刺激的である。それぞれが有するバックボーンの違いで

あろう。特に社会福祉士の方が、日々接している介護を要する高齢者や福祉に携

わる方々と対応をしている。

この方々にとっては、弁護士と接する機会がないとのことである。この異業種間交流

の機会に、介護を要する高齢者や福祉に携わる方々との接点を得よう。

三者間の協議とその結果から得られる場所は、自分にとって新しい扉を開けた体験

の場所となろう。

 

      過払債権者申立による金融会社(上毛ローン)破産の顛末
                                       
                                                                                         弁護士 小此木 清 

1 上毛ローン被害対策弁護団は,平成20年8月8日,前橋地方裁判所高崎支部に,上毛ローン上毛與信株式会社(群馬県高崎市島野町988-1,群馬県知事(9)第00054号,以下「上毛ローン」という)の債権者破産を申立て。東京地裁に移送後,平成20年(フ)第14934号事件として受理され,現在,管財人のもとで清算手続が進行している。
  平成20年春から秋に至るまで,上毛ローンは,廃業,再開,株式譲渡,第三者の介入,弁護団による債権者破産申立,再生申立による巻き返し,再生申立取下,管財業務の進行,と荒波に揉まれた。日弁連メーリングリストCAM上で,上毛ローン前代理人からの投稿などにより刺激的状況が記載されていたが,本報告書にて,客観的事実を取り上げ,上毛ローン破産にいたる時の流れを追う。
  申立代理人弁護士数17名,弁護団団長は鈴木克昌弁護士で,本報告者は副団長である。
2 上毛ローンは,群馬県内資本で最大の貸金業者であり,顧客は約1万2千名,利息収入が年間20数億円であった。上毛ローンは一貫して出資法規制の上限ぎりぎりの高利で貸付を続けて利益を上げており,群馬県内で多重債務者の相談にのるとたいてい債権者として登場する業者だった。
  近年は,過払金返還請求訴訟が多数提起されていた。
3 前経営陣の迷走
  平成20年4月上旬,上毛ローン前経営陣は,会社清算を決意。
  4月23日,同社は,取引銀行に対し,債権譲渡し(消費者金融顧客債権),同月24日債権譲渡の登記(第2008-13682号)をした。
  4月25日,同社は松本弁護士(CAMにて投稿済みであるので実名記載)に清算業務委任。業務停止し,全社員解雇。
  4月28日,同社は,群馬県商政課に対し,廃業連絡。
  延滞している過払返還金について,「貸し付け業務を再開しない限り,現金はなく,支払えない」と述べ,今月以降の返還が不可能になる見通しを示すとともに,同社は貸出債権を別の貸金業者に譲渡する方向で検討している旨,表明。
  同社は,業務を停止し,2店を閉鎖。電話も自動音声による応答のみで,店頭には貸付金の返済先の口座番号を載せた文書が張られていた。「振込口座も大口債権者の銀行の管理下にある」とされ,松本弁護士預かり口口座を開設して顧客に返還先をして連絡した。同時に判決や和解による債務名義のある分を含めて,すべての過払金の返還を停止した。
  5月12日,弁護士17人が,「上毛ローン被害対策弁護団」を結成した。上毛ローンに対し,過払金返還を促すことと,現在の借り手が利息を払い過ぎないように保護することが目的。
  5月13日,上毛ローンが突然業務再開を意思表明し,全社員の再雇用を図る。
  6月10日,株式会社オーロラ代表取締役竹原氏(ホームページ上で公開されているので実名記載)が,上毛ローン経営陣に対し,株式の譲受申入。
  6月14日,弁護団が上毛ローン代理人と交渉。過払金の返還と貸付債権の利息制限法引き直し計算による顧客保護を要求。任意整理方向での協議を模索。
  7月8日,株式会社オーロラ代表取締役竹原氏は,旧経営陣に対して,持ち株の有償買取と退職慰労金の支払い約束をした。
  7月22日,竹原氏と上毛ローン旧経営陣による株式譲渡契約締結。
  7月27日,松本弁護士は解任となり,後の上毛ローン代表者竹原氏との攻防・錯綜状況となる(CAM投稿文参照)。
  7月28日,上毛ローン顧客に対し,借入金返済口座を,松本弁護士預かり口口座から,(株)オーロラの子会社の有限会社サンヨー口座へ変更。
  8月4日,上毛ローンの代表者に,旧経営陣から株式を取得した竹原氏が就任した。竹原氏は過払金返済に言及せず。
4 過払債権者による破産申立・保全管理命令申立
  8月8日,弁護団は,破産手続開始申立を前橋地方裁判所高崎支部へ提出。
  弁護団とすれば,地元で管財業務を処理するよう強く申し入れたが,同日,東京地方裁判所へ移送決定がなされた。
  8月13日,弁護団が裁判官と面談。
  弁護団は保全管理命令を強く求めたが,東京地裁によれば,保全管理命令は,債権者申立では,会社にとって死刑判決にも等しいので出せないとのことであった。
  8月14日,弁護団員から,上毛ローンに対し,動産強制執行申立。本社にも現金はほとんどなく執行回避のために別に管理していることがうかがえた。
  8月29日,弁護団員申立で,上毛ローンの(有)サンヨーに対する上毛ローン顧客の借入金返済口座(有限会社サンヨー名義)の預託金返還請求について債権差押え執行。しかし,(有)サンヨーからは,差押えにかかる債権の存否について「ない」との回答があった。後日,差押え当日に預金を引き出していたことが判明。
  9月3日,上毛ローン代表者竹原氏の債務者審尋。竹原氏が,(有)サンヨーから資金を引き上げ,個人資金と上毛ローン資金を混在化している点を指摘。
  9月17日,上毛ローン代表者竹原氏から弁護団代表者に対し,懲戒請求。理由は松本弁護士と癒着している,配当の少ない破産を申し立てることは弁護士倫理に反するなどというもので明らかに破産回避のための恫喝であった。
  9月22日,東京地裁にて,第2回債務者審尋。裁判官は竹原氏に対して,過払金の支払いをしない以上支払い不能と見なさざるを得ないと警告。しかし,竹原氏は,過払債権者に対して過払金を払えないのではなく,払いたくないのだと明言して支払いを拒否。裁判所は,破産手続開始決定。
  10月10日,上毛ローン(竹原氏)による再生手続開始申立,調査委員による調査開始。
  10月22日,上毛ローンの過払金は完済分も含めて約12億円にのぼるとの計算結果判明。
  10月23日,再生手続の申立取下。破産手続の続行が確定。管財人による清算手続が粛々と進行している。
5 課題
  弁護団は,今後以下の課題に取り組んでいく。
  ① 管財人に対し,顧客に請求する前提として利息制限法による引き直し計算をすること,及び顧客からの取引履歴開示請求に応じて過払債権者に債権届出をさせることを要求。
  ② 金融機関の上毛ローンに対する債権譲渡・債権譲渡担保契約による配当優先主張に対し,異議を述べるとともに,利息制限法違反の貸付に資金提供してきた金融機関の責任を明らかにするよう要求。
  ③ 上毛ローン旧経営陣や同族関係企業への責任追及。
6 まとめ
    上毛ローン債権者破産申立後1ヶ月後に,三和ファイナンス対策弁護団が三和に対し債権者破産申立をした。三和側は,申立債権額プラス1割の支払いをするとして破産回避をした。
  過払債権者による破産申立は,過払金の支払いを免れようとする金融業者に対する追及方法として,有効な一手段となった。
                                                                                                                            以上

 私は,群馬弁護士会高齢者・障害者支援センターの委員長です。本ブログは,この一年の委員会報告です。

1.高齢者問題に立ち向かう
   本委員会の正式名称は、「高齢者・障害者支援センター」です。この名称から予想されるとおり,会内向けの「委員会」  だけではなく対外的活動を予定しています。高齢者等の問題は山積状況にあります。「消費者被害」,「終末期医療」,「後期高齢者医療制度」,「虐待を含む成年後見の問題」,「相続」など多様です。委員個々は相続等の法的知識はあるものの、高齢者法や認知症等の実態について若干情報に疎いのが現状です。そのため、医師や高齢者施設長など外部委託をしながら、高齢者・障害者の実態について講演を依頼するなどして、知識・経験の補充に努めてきました。委員個々のこの一年は、高齢者等の問題の山に向かうための準備期間であったといえます。
 
2.在宅高齢者虐待対応専門職チーム
     平成20年11月19日、社会福祉士・司法書士と第1回専門職チームち上げ連携協議会を開催しました。目標は、専門職チームを平成21年春に立ち上げ、同年秋に県予算を獲得することです。
    現在,高齢者虐待に対応する社会福祉士・司法書士と連携のためのネットワーク体制を作りました。
     三者で,
    ①「高齢者の権利擁護相談支援事業実施要綱」
    ②「高齢者の権利擁護相談支援事業委託契約書」
    ③「個人情報取扱委託契約特記事項」
   など,構築していきます。

3.成年後見制度
     弁護士の成年後見人就任は、年一桁台にとどまっています。その原因は,成年後見人報酬が激減の一途をたどり、このことも影響して弁護士の成年後見人就任が、複雑案件の少数にとどまるであろうと考えられます。このため,市町村長申立による成年後見制度利用を後押しし,実態にきめ細かく対応させるため、専門職チームを受け皿とする可能性を模索しています。

4.高齢者・障害者に対する出張相談
     平成20年度、高齢者・障害者に対する出張相談を企画しましたが、遺言や相続等の幅広い出張相談を掘り起こすために、さらに具体的企画を練り上げ、次年度の目標としていきます。

5.平成20年度委員会活動報告
    □成年後見問題
     成年後見人,未成年後見人を配分。
     裁判所,県と市の担当者との協議。
    □出張相談窓口設置の件(担当・栗原)
    □高齢者虐待専門職チーム設置(担当・紺)
    □日弁連報告(担当・市場)
    □事例研究(担当・青木)
    □認知症に関する講演
      高齢者医療に携わる田中志子医師による,現場における問題点等 の講演。
    □高齢者(嚥下困難)に関する講演と嚥下食夕食のつどい
        山川治歯科医師(前橋赤十字病院歯科)の講演時には、ホテル天坊料理人に「嚥下食」を作ってもらい、これを試食 しながらの講演を実施。
    □群馬県高齢者等消費者被害防止対策連絡会議へ群馬弁護士会として 参加。
    □委員のメーリングリストの構築
    □平成20年3月鎌倉研修旅行
     精進料理と寺社めぐり。「高齢者委員会の皆様」名での団体旅行だったため,豆腐ばかりで肉など出していただけなかった。
    □平成20年9月信州(善光寺詣で)研修旅行
      鎌倉旅行の轍をふまず,グルメ(?)の旅でした。
                                                          以上