2014年9月 Archives

セルフケアプランの策定

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  弁護士の舟木諒です。

  
   先日,「医療と介護の連携フォーラムin前橋」事業の一環で,ワークショップ「丸投げしない老後の暮らし方」に参加いたしました。

1 ケアプランとはそもそも何か?
 自ら作れなくても,ケアプランの考え方を知れば,丸投げでなくケアマネージャーからの適切な補助を得ながら自分に合ったケアプランの策定ができます。
 講演中,紹介された3点は,非常に感銘を受けました。
① 介護保険給付の限度額まで無理して使うのではない。自分がしたいことを中心に考えなければ,自分の暮らしではなく,制度に暮らしを合わせ,疲れてしまうだけである。
② ジグソーパズルのように1週間の予定で空いている日に何かを埋めたがらない。埋めれば自由な時間がなく,自分がケアプランに支配されていくようになる。
③ 介護保険の利用だけに縛られない。自費で好きなことができることを考えればよい。
 すなわち,ケアプランの基本は,「どう生きたいか」がまず最初であり,その中で,介護保険を利用できるものを当てはめていくという順序です。これとは逆に介護保険では「こういうサービスが利用できる」から,「利用する」と暮らしを変えていく発想ではないのです。
2 事前の表明の重要性!
 ケアプランについても,利用者が「自分はこういう風に生きたい」という意思表示ができる場合には,その思いを反映することはできるでしょう。しかし,意思表示ができない,判断能力がなくなった後では,本人の生き方を周りの家族が決めざるを得ません。残念ながら,脳梗塞や突発的な事故によって,介護保険を利用せざるを得なくなることも少なくないのです。
 事前の準備が必要な点は,任意後見契約や遺言,家族信託,医療に関する意思表示など全てに通じるものです。
 自分らしく生きるには,自分らしい生き方を表明できるときに準備しなければ,叶いません。
 実際,グループで家族になりきってロールプレイイングを行い,家族会議を行いましたが,「何が利用者にふさわしいか」という視点から考えているはずでも,それぞれの意見は,異なりました。例えば,「怪我が大変だから何もしないように」「周りが全部やる」という意見は,本人のためを思っているものですが,本人が「できる限りやりたい」という意向を持っている場合には,上記意見は,本人の「自分らしさ」を実現しているはいえません。

 今回のワークショップで講師をされた全国マイケアプランネットワークは,事前の意思表明をするために「マイライフプランの玉手箱」という冊子やケアプランを自分で立てることができる冊子として「マイケアプランのためのあたまの整理箱」を策定しているようです。

 私自身,考え方の基本を学ぶ良い機会でした。


 弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/


弁護士の舟木諒です。


1,不当条項の是正が実現されました!

私も加入しているNPO法人消費者支援群馬ひまわりの会は,家庭教師の派遣業者に対し,契約条項の見直しを求めていました。

 今般,事業者側から,当会の申入れを受け入れ,自主的に条項を変更したとの連絡を受けました。

 消費者の交渉力の弱さに乗じた不当な利益の確保は本来の事業活動による収益ではないことを認識すべきです。

 今回の事業者側の早期対応には,敬意を表するとともに,今後も消費者目線での事業活動の展開を願うばかりです。

2, 契約条項は常に有効とは限らない!

 「契約条項に書いてある」としても,下記のとおり,法律上「無効」と判断される場合があります。他にも「一切責任を負いません」というような条項も消費者契約では,無効とされるものです。

このような条項を放置しておけば,未来永劫,消費者被害が生じる事になりかねません。「これはおかしいのでは?」という素朴な疑問を持たれた方,情報をご提供ください。

 

 今回申し入れを行った具体的な内容については,以下のとおりです。若干専門的になりますので,ご興味があれば。

1,中途解約・違約金の規制

法律上,家庭教師派遣等の「特定継続的役務」については,消費者から中途解約をすることが認められております。また,当該契約を消費者が中途解約した場合に,事業者が取得できる違約金については,上限が定められております。

具体的には,解約時期が特定継続的役務の提供開始後である場合,①提供された特定継続的役務の対価に相当する額及び②通常生じる損害の額の合計額に法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える違約金条項は無効とされております。

そして,①の特定継続的役務の対価に相当する額は,「契約時」での単価が上限と解されており,契約時点の単価を上回る金額で再計算をすることは許されておりません。

2,解約時の単価を変えるとは?

例えば,家庭教師派遣の代金が1年コースでは12万円(1か月あたり1万円),6か月コースでは9万円(1か月あたり1万5000円)のように契約期間によって,1か月あたりの単価が異なるとします。

Aさんが,1年契約を締結した後,6か月で解約した場合,①「提供された特定継続的役務の対価」は,契約時の単価を元に6万円(1か月1万円×6)となるはずです。

ところが,事業者によっては,解約時点では,6か月しか経過していないことに着目し,あたかも当初から6か月コースを締結したものとみなし,1か月あたり1万5000円の単価で計算する業者がいます。

そのため,提供された役務の対価は,9万円(1万5000円×6)と計算され,差額の3万円が請求されたり,消費者が一括払いで先に支払っていた場合には,3万円しか返還されなかったりすることになります。

このような解約時における単価を変更する規定は,特定商取引に関する法律によって,無効と考えられます。

今回は,上記のような規定について,是正を求め,それが実現したものでした。

今後も,このような不当条項の申し入れ活動を継続して参ります。

 

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/

弁護士板橋です。

先日,舟木弁護士とともに,前橋市地域包括支援センター南部において,高齢者福祉に携わる多職種の方々に対して,個人情報保護に関する研修の講師をさせていただきました。自治会長,民生委員,ケアマネージャー,介護事業所,病院,社会福祉協議会,市役所職員等々,大勢のご参加をいただきありがとうございました。

 

2003年(平成15年)に個人情報保護法が成立し,2005年(平成17年)4月1日に法律が全面施行されました。これを機に,様々な分野で個人情報に対する過剰な反応がなされ,必要な情報を共有することが出来ず,支障を来す場面が増えております。

国や地方公共団体では,各種ガイドライン等を作成し,ホームページ上で公開しております。しかし,まだまだ,国民・市民への適切な周知がなされているとは思えません。早期に周知の対策が取られることを望みます。

 

さて,福祉現場における個人情報保護については,厚生労働省より3種類のガイドラインが作成されております。

① 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/170805-11a.pdf

 ② 福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/161130fukusi.pdf

③ 福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf

 これらは,個人情報保護法に基づき,福祉分野における個人情報の取り扱いについて詳細に解説がなされております。個人情報を取り扱う方は,是非一読いただきたいと思います。

 

 研修会では,前半は,舟木弁護士が個人情報保護法について概説講義をさせていただき,後半は,板橋が事前にいただいた質問事項に対して解説をさせていただきました。

 ご質問いただいた事項からは,個人情報の取得時の対応方法,個人情報の第三者提供の時の対応方法等,個人情報の取り扱いに関して,現場での大変な苦労が窺えました。

 特に,各事業所・法人等において,利用者や利用者家族から個人情報を取得する場合に,どのような説明がなされているのかによって,その後の個人情報活用時に大きな違いがでます。

適切な説明がなされていないことにより,利用者家族とトラブルになってしまった事案が散見されます。他方で,適切な説明がなされることによって,利用者・利用者家族と信頼関係が強まる結果となる場合も多数存在しております。

 

個人情報の取り扱いについて,事業所や法人内でルールを作成し,研修を行うことは,本来の業務について多くの気づきを与えてくれます。本当にオススメです。

弁護士法龍馬では,研修会の講師や事業所内の個人情報取り扱いのルール作りに協力させていただきます。ご要望がありましたら是非ご連絡ください。

 

※研修資料 パワーポイント

 ヨーロッパでの視察はアジアでの視察に比べ,視察先との折衝に苦労すると言われます。確かに,ありがたいことに,アジア圏では,日本から弁護士が来るというと一定のリスペクトを持って迎えて下さっているような気がします。他方で,ヨーロッパではそれはほとんどないです。

 今回の視察でも,視察先との折衝に苦労していたところ,お世話になったのが,ロンドン視察①でも記述させていただきました英日法曹協会の方々及び英国バリスターのHelen Tungさんでした。

 Helenさんは,自身のブログで,群馬弁護士会の訪問を取り上げて下さっています。

   http://helentung.blogspot.co.uk/

 

 英日法曹協会では,リンカーン法曹院内にてレセプションパーティーも開催していただきました。そこでは,日本に縁のある法律家だけでなく,翻訳家の方や単身イギリスに渡って幼稚園を開業した方などたくさんの方にお集まりいただきました。

 イギリスで活躍される方々は皆パワフルで,こちらは圧倒されるばかり。たくさん刺激を受けました。もちろん,苦労話もあり,前述幼稚園の先生は,「保育士さんを苦労して育てても,あっさり辞められてしまって‥」と,日本からきた方々は,労働に対する考え方・文化の違いに苦労されるようです。

 ちなみに,群馬からは,幸煎餅や日本酒「赤城」を持参したのですが,とても好評でした。

 

 海外視察は,身銭を切っていますので経済的にはきついです。しかし,それ以上に得るものが多く,いつもとても楽しいです。

 次は,何処へいって,何を学んでくるか。○仕事の合間に(×仕事中に)そればかり考えています。

 それでは,また。

 

 弁護士 金 井   健

 

 弁護士法人龍馬 http://www.houjinryouma.jp/

レセプションパーティーより

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さてさて,そもそもの今回のロンドン視察の目的は,イギリスの労働・社会保障制度の現場を知ることにありました。今回は少しそのお話をしたいと思います。

 

日本は,労働者の保護規制を緩和させ,労働形態をより柔軟に,労働市場をより活性化させる方針での改正議論がなされています。最近でいえば,割増賃金規定適用除外の範囲拡大の議論であったり,解雇規制の緩和(より簡単に解雇できるように)の議論であったりするのがその流れです。

他方で,労基法を遵守しないブラック企業が社会問題となったり,過労死を含む働き過ぎが問題となったり,非正規労働者と正規労働者の労働条件の格差が問題となっているわけです。そして,法改正の議論には,必ず,「諸外国(特に欧米)ではこうなっている」という指摘がなされます。

 

イギリスはどうでしょうか。確かに,労働市場は日本に比べて活発なようです。解雇も日本に比べてしやすい。例えば,大切なのはカウンセリングや異議申立などの機会(手続)であり,解雇の理由(能力の有無など)はあまり問題にならないようです(差別には厳しいですが)。割増賃金の規定もありません。1週間で48時間という法定労働時間の規制があり,それ以上働く場合は各労働者との間で個別に合意を書面でとる必要があります(個別的オプト・アウト)。

では,ブラック企業が多いかと言えば,過労死などは問題になりません。労働条件が悪ければ労働者は簡単にその会社を辞めてしまうからのようです。職種にもよりますが,法定時間以上の労働もあまり多くないようです。派遣労働者も12週間以上働くと,正規労働者と同じ労働条件としなければなりません。なので,企業もメリットが少ない派遣労働者をあまり使わないようです。

 

なるほど,いいことずくめのように見えて,イギリスの労働法制を見習えというのも頷けます。しかし,イギリスの法制度の背景には,人々の労働に対する考え方(法習慣・法風土)の違いがあります。すなわち,イギリスの人は,仕事に就くとき,その職務に就くという考え方をしており,会社に入るという意識は低いようです。働いている場所自体はステップアップのための段階であり,よりよい条件があれば職場を移ります。

仕事は職務に対して就くものですから,解雇する側も明快です。その仕事が十分にできない場合はもちろん,その事業部門が赤字であれば,会社全体が赤字でなくても整理解雇の対象なのです。このような考え方は,同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払うという同一労働同一賃金の原則は受け入れやすいといえそうです。そのため,非正規社員と正規社員の労働条件の格差が少なくても違和感はないでしょう。

これに対して,日本は年功序列・終身雇用に代表されるように,就職というよりは就社でした。会社を中心にその個人に仕事を割り振られるのも当然です。それゆえ,転職も少なく,中途採用も少ないという歴史がありました。ブラック企業を育てているのもそういった仕事に対する考え方も背景としてあったかもしれません。

このような仕事に対する考え方(法習慣・法風土)が,農耕民族・狩猟民族の違いに由来するかどうかは分かりませんが,年功給や終身雇用を再評価する研究もありますし,一概に悪い考え方と言い切れるかはわかりません。

大体,単純に考えて,労働者が職場をころころ変えることは会社や社会全体のコストになりうるものですから,出来るだけ労働者の移動は少ない方が合理的だという考え方は成り立ちうるところです。

 

大きく影響を与えているのはグローバリゼーションなのでしょう。国境が無くなるということは,法習慣や法文化の淘汰も起こりうるものです。何が正しいかということ(もちろん正しさも重要ですが)以上に,何がグローバル・スタンダードかがととっても重い事実なのかも知れません 

(続く)

 

弁護士 金 井   健

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/

今回訪問したHonda Motor Europe Ltd(日系企業)

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