2011年6月 Archives

 

 時代の流れでしょうか。外国籍を持つ方からの国籍取得のご相談や,逆に,外国籍を持つ人の雇い主の方からの相談,外国籍を持つ人との離婚の相談といった案件が少しずつですが増えてきました。

 

 相続の相談でも,今後は,“海外出身なため日本語は書けないが日本で遺言を残したい”,“父親が亡くなりました。父と母は10年前に離婚しており,その後父は外国人の女性と再婚。その女性との間にも子供が1人いますが,相続分の割合はどうなりますか?”といった国を跨いだ相続(国際相続)の相談が増えてくるのではないでしょうか。

 

 ① 日本在住のアメリカ国籍を有する人が日本において英語で書いた遺言は有効?

 

 遺言の方式については,遺言の方式の準拠法に関する法律が適用されます。同法2条によれば,遺言を作成した当時の国籍を有した国の法律でも,住所を有した地の法律でもよいとされています。

 なので,日本の法律あるいは州法いずれかの法律によって定められた法律に従った遺言であれば,その遺言は有効であるということになります。

 そこで,日本の法律すなわち民法ではどうでしょうか?

 第1回で説明したように,自筆証書遺言は,遺言者が,①その全文,②日付および③氏名を自署し,押印することが必要です。他方,使用言語についての定めはありません。外国語で遺言することも可能であるとする裁判例もあります。

 したがって,英語で書いた遺言も遺言書の方式としては有効と考えられます(もっとも,内容の有効性の問題は残ります)。

 しかしながら,英語と日本語のニュアンスの違いから後に争いの種になることも多いと考えられます。

 争いを避けるには,この場合にも公正証書遺言が有効です。公正証書遺言は日本語で作成しなければならない一方で,遺言者が日本語を理解できない場合は,通訳を立ち会わせて遺言を作成することができます

 

 ② 国際相続はどこの法律に従う?

 

 法の適用における通則法36条によれば,被相続人の本国法に従うこととされています。例えば,上の事例で,亡くなったお父さんが日本人,亡くなったときの奥さんが外国籍という場合であっても,日本の法律が適用されます。

 上の事例では,日本の法律に従えば,外国人の配偶者が1/2,その子供がそれぞれ1/4,1/4ということになります。

 

 弁護士 金 井  健

 

 次回の「遺言」を書く前に知って欲しいこと ⑸ は1週間お休みして,2週間後の掲載となります。

 

 遺言を執行するためには,公正証書遺言を除き,家庭裁判所で検認という手続を経る必要があります。相続人の多くは,この検認という手続で初めて被相続人の遺言書を確認することになります。

 

 私が,修習生のとき,家庭裁判所での研修で,この検認手続を傍聴する機会がありました。そこでは,とても印象的な出来事がありました。

 仲良く,歓談しながら,法廷に入って来た相続人らが,「Aさんに相続財産の全てを相続させる」旨の遺言書の内容を確認し,そのとたんに何とも言えない空気がその場を包み,それから相続人間の会話はとてもたどたどしくなったのです。

 まさに,争族のはじまりです。

 

 このように,特定の相続人に生前からの思い入れが強いからか,あるいは逆に特定の相続人に強い恨みがあるからか,特定の相続人に全財産を相続させる,あるいは特定の相続人を相続から外す遺言書が見つかりトラブルになることが多くあります。

 

 これは,遺留分という相続人固有の権利があるためで,遺言によっても遺留分を侵すことができないからです。仮に,遺留分を侵害するような遺言書が見つかった場合,遺留分権利者は遺留分を他の相続人から取り戻すことができます(ただし,遺贈があったことを知ったときから1年以内に請求しなければならない)。

 

 遺留分の割合については,直系尊属のみが相続人となるときは被相続人の財産の3分の1,その他の場合は被相続人の財産の2分の1と民法で規定されています。兄弟姉妹の相続人には遺留分がないことも注意して下さい。

 

 どうしても遺留分を持つ相続人に相続させたくない場合,相続廃除という制度もあります。しかし,相続廃除が認められるためには,被相続人に対して虐待をするなど著しい非行を行うことが要件となっており,なおかつ,被相続人が生前に家庭裁判所の審判又は調停を求める必要もあり,決して容易ではありません。

 

 したがって,遺言を作成する場合には,遺留分に配慮して作成するのがよいといえるでしょう。

 

 弁護士 金 井  健

 

次回,「遺言」を書く前に知って欲しいこと (4) の掲載は一週間後となります。

 

弁護士法人龍馬の新HPはこちら http://www.houjinryouma.jp/

 

 

公正証書遺言とは,証人2人以上の立ち合いのもとで,遺言者が公証人に口授して作成する遺言のことで,民法上特別な方式が規定されている遺言です。

 

公正証書遺言であれば,公証人や専門家が介在するため,記載漏れなど形式上のミスの心配はなくなります。また,作成された遺言書は公証役場で1通保管してくれるので,偽造・紛失の心配もありません。

 

公正証書遺言は,証人・公証人に内容が知られてしまうということや作成手続がやや煩雑であること等がデメリットですが,最もトラブルが生じにくい遺言方式です。近年,作成数は増加の一途をたどっており,平成21年は,年間7万7000件以上となっています。

 

 

(公正証書遺言の件数の推移・日本公証人連合会資料参考)

 

グラフ.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

したがって,遺言者にある程度の財産がある場合(例えば,不動産がある)は,公正証書遺言を作成することをお勧めします。

その際に,弁護士法人龍馬にご依頼されれば,内容を法律的な観点から助言すること,遺言の執行が確実になされるよう弁護士法人龍馬を遺言執行者として指定することも可能になります。

 

公正証書遺言の作成

 

⑴ 遺言の内容

   弁護士と相談,公証人と事前打ち合わせ。

⑵ 必要書類

 ① 遺言者の印鑑登録証明書

 ② 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本

 ③ 相続人以外の者に遺贈する場合,その者の住民票

 ④ 相続財産に不動産がある場合,その登記事項全部証明書及び固定資産評価証明書

⑶ 証人2人

⑷ 作成当日

  遺言者の実印と証人の認印持参

 

弁護士 金 井   健

 

次回,「遺言」を書く前に知って欲しいこと (3) の掲載は1週間後となります

 

最近,弁護士会や市役所等が主催する法律相談会などに参加すると,

 

「遺言書の書き方を教えて欲しい。」 

 

「これで問題がないか見て欲しい。」 

 

という相談をお受けすることが多く感じます。

 

他方で,その答え方はとても難しいと思います。

なぜなら,短時間の間で,限られた情報の中で,その遺言書に過誤がないかを全てチェックすること,あるいは完璧な助言をすることがほぼ不可能だからです。

 

 「弁護士さんなのにそんなことも分からないのか。」と思われるかもしれませんが,遺言書がその書き方や残し方によって後にトラブルになることが多いという現状を考えると,助言も慎重にならざるをえません。

 

 そもそも遺言はその方式によって3種類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)に分けることができます。このうち,最も簡単に作成できる遺言が自筆証書遺言です。この遺言は,いつでもどこでも作成できるもので,遺言者が①その全文,②日付および③氏名を自署し,押印すれば十分なものです。

 その意味でいえば,相談に来た方に対しても自筆証書遺言の作成方法を助言することも可能なのかもしれません。

 しかしながら,最もトラブルが生じやすいのも自筆証書遺言です。

 

 具体的にいえば,財産の記載漏れ,間違い,遺留分相続人への配慮等内容面での不備があることがあります。内容に著しい不備があれば,遺言が無効となることもあります。

さらには,保管場所にも注意を払う必要があります。

分かりやすいところに保管すれば,相続人によって遺言書が改ざんされるおそれもありますし,逆に,自分にしか分からないところに保管すると誰にも見つけられずに終わる可能性もあるものです。

 

 そういった,自筆証書遺言の問題点から,近年,多くなっているのが公正証書遺言です。

 

弁護士  金井  健

 

次回,「遺言」を書く前に知って欲しいこと(2)は,一週間後の掲載となります。

 

 

 

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