限定承認って何?
1 限定承認とは?
相続が生じた場合,相続人が取り得る選択肢として,①相続を承認する,②相続を放棄する,そして,③相続の限定承認をする,という3種類の選択肢があります。
相続財産のうち,不動産や預貯金などのプラスの財産が明らかに多いのであれば,①相続を承認すればよく,他方,借金等のマイナスの財産が明らかに多いのであれば,②相続を放棄してしまえばよいので簡単です。
しかし,相続財産がプラスとなるかマイナスとなるか分からない場合はどうすればよいのでしょうか。
このような場合のために,限定承認という手続があります。限定承認手続を行うと,相続債務を弁済しなくてはならない責任は,積極財産の範囲に限定されます。すなわち,相続人は,仮にマイナス財産がプラス財産を上まった場合でも,プラス財産を超えてマイナス財産を支払う必要はありません。他方,プラス財産が余った場合は,残ったプラス財産を相続することができます。
したがって,借金がどれくらいあるのか分からず,相続財産が残るかどうか分からない場合は,限定承認手続をとることが手段として考えられます。
また,限定承認手続では,先買権制度という制度が認められています。
先買権制度を利用すれば,相続人は,裁判所の選任した鑑定人による評価を受けたうえで,その評価額以上の金額を支払うことにより,確実に遺産を取得できます。
相続はしたくないが,長年住んでいた住居を手放したくないので,住居は被相続人が確実に買い取りたいなどという場合に有効です。
このような制度は相続の放棄では認められないことから,これも限定承認手続のメリットの一つといえるでしょう。
もっとも,下で示すように,相続の承認や放棄と比べて,限定承認手続は手続が複雑であり,費用もかかるため,ご自身で判断される前に,弁護士などの専門家に相談された方がよいと思います。
2 手続の流れと期間の目安
相続の開始
↓ 3か月以内
① 限定承認の申述
↓ 1週間~
② 限定承認申述の受理の審判
↓ 5日以内(相続財産管理人が選任されている場合には選任後10日以内)
③ 相続債権者への債権届出の催告・公告
↓ 2か月以上
④ 清算手続(換価,弁済) ※ 先買手続
↓相続財産の性質(預貯金・不動産)や先買権を行使するか否かによって異なる
終了