「非行少年」に,もっと弁護士を!

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 弁護士は,非行を犯したとして少年審判(裁判)を受ける少年の「付添人」となり,少年事件に深く関わっています。

 皆様の中には,「付添人って何?」と思われる方も多いことでしょう。

 

 「付添人」は,少年審判を受ける少年に付き添い,少年の意見を代弁し,少年の権利・利益を守る役割を担っています。少年審判を受ける少年たちは,家庭環境などに問題を抱え,信頼できる大人に出会えないまま,非行に至っていることが少なくありません。付添人は,そのような少年の立場から手続に関与し,少年の「代弁者」として,適正な審判を求めたり,あるいは少年の内省を促し,また,少年を取り巻く家庭・学校・職場等の環境調整を行うなど,少年の立ち直りを支援する活動を行っています。

 

 最近,TVで「国選弁護人」というドラマ[i]が放映されていますが,成人の刑事事件の場合,資力のない被告人には国費で「弁護人」が選任されます。刑事裁判と少年審判は,その根本理念に違いがありますが,弁護士「付添人」のイメージは持っていただけるのではないでしょうか。

 

 しかし,少年事件において,成人の刑事事件と大きく異なっているのは,弁護士の選任率です。成人刑事事件の被告人のほぼ100%に弁護人(弁護士)が選任されているのに対し,現状の国選付添人制度は対象事件が限定されているため,付添人(弁護士)の選任率は低いままにとどまっています。2008年の統計によると,少年審判に付された少年のうち約9%の少年にしか付添人が選任されていません。少年鑑別所に収容されて身体を拘束されている少年だけに限定しても約40%にしか付添人が選任されていないのです。

 

  このように「付添人」は,心身ともに未成熟な少年に対し,未来に向けた更生・立ち直りを支援する重要な役割を担っておりますが,資力の乏しい少年や保護者には付添人が就けず,付添人がいないまま少年審判を受ける「置き去り」にされた少年たちが多いのです。この事実は,少年の健全な育成,成長・発達が社会の重大な関心事であるのと同じように,少年事件の予防,少年の立ち直りにとり,大きな社会問題ではないでしょうか。

 

  そのため,標題のとおり,少なくとも少年鑑別所に収容され身体を拘束されている少年の事件全件に,成人と同様,国費で国選付添人を就ける制度(「全面的国選付添人制度」)の早期実現が求められます。

 

  この制度の実現には,法改正が必要となりますが,そのためには世論の喚起が一番重要であると考えます。皆様が,この問題を広く知っていただき,法改正に向かう大きな世論の渦になることを願っています。

 

 弁護士 星野 啓次

 

 

  弁護士法人龍馬のホームページへ:http://www.houjinryouma.jp/



[i] 『告発〜国選弁護人』はテレビ朝日系列で、2011113日より、毎週木曜日の21:00 - 21:54JST

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This page contains a single entry by published on 2011年2月19日 09:22.

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