石飛幸三著『口から食べられなくなったらどうしますか「平穏死」のすすめ』
石飛幸三著『口から食べられなくなったらどうしますか「平穏死」のすすめ』を読みました。本書より改めて,自分がやりたいことを再認識しました。石飛氏は,四十年にわたる医師としての経験から「自然死を知らない医者」と吐露しています。さらに,「老衰の終末期を迎えた体は,水分や栄養をもはや必要としません。無理に与えることは負担をかけるだけです。苦しめるだけです。」と説明しています。医療への過信は,人間が人間としての大事なものを見失ってきたとも記載しています。そして,「老衰のため体に限界がきて,徐々に食が細くなって,ついに眠って静かに最期を迎えようとしているのを,どうして揺り起こして,無理矢理食べなさいと口を開けさせることができましょうか。……もう寿命が来たのです。静かに眠らせてあげましょう。……これが平穏死です。」と。
医師の立場では,この説明で十二分に現代医療の問題提起がなされています。そもそも,「胃瘻は,意識があるのに嚥下機能が失われている人にとっては,極めて有効な栄養補給法です。……子供の食道狭窄に対する応急的処置として行われたのが始まりでした。……(しかし)もはや物事を考えること,喜怒哀楽を感じることさえもできなくなった人に対して,強制的に栄養を補給することは本当に必要なことなのでしょうか。」と。
しかし,法律家の立場では,医師が老衰状況にある人に,胃瘻をつけざるを得ない医療措置に対し,手続き上,当該状況を解消しなければなりません。その解決方法は,老衰に至るであろう目の前の経口摂取が困難な患者が,認知症となり意思表明できない状況であったとしても,当人が事前に真意により,延命のためだけの医療行為を望まない事前指示手続を普及させることです。
私は,『快適に老いる!~かかりつけ弁護士を身近に』の冊子を,是非皆様に読んでいただき,事前指示書を作成しておいてもらいたいと願っております。石飛医師の本書は,私の仕事に対する最大の根拠を,具体的・詳細に説明しています。私にとって,走りながら箇条書きしてきたことに対し,改めて,起承転結の文脈を示してくれたからです。