執行猶予の説明
Aは,Bさんに暴行し傷害を負わせたので,傷害等被告事件における判決「懲役1年6月,執行猶予3年,保護観察付」を受けました。この執行猶予付判決の説明は次のとおりです。
1.
そもそも,本件における執行猶予とは,
刑の言い渡しをした場合において,情状によって一定の期間内その執行を猶予し,その期間を無事経過したときは刑の言い渡しはその効力を失うとする制度をいいいます。
本件におけるAに対する「懲役1年6月,執行猶予3年」という判決は,有罪ですが,3年間,懲役という刑務所に収監されることが猶予されたという意味です。
Aには,有利な情状,すなわちAが犯行を行った際にやむを得ない事情が判決にあたり考慮されたのです。
そして,猶予された3年の期間を無事経過したときは,「懲役1年6月」という刑の言い渡しはその効力を失い,Aはこの刑の執行を受けることがなくなります。しかし,Aがこの3年の期間内に,さらに新たな罪を犯し,禁固以上の罪に処せられたときには,本件で言い渡された「懲役1年6月という刑の執行を3年間猶予する」というAへの恩恵が失われてしまうのです。
それゆえAは,今後の社会生活に対し,社会人としての自覚を持ち,改善更生が求められるのです。
2.
次に,「保護観察付の執行猶予」とは,
執行猶予に付随して,Aを指導監督し援助することによって,一般社会の中でAの改善更生をはかる制度です。保護観察は,保護司が担当し,Aの改善更生を助けることになります。
「保護観察付執行猶予」の判決の場合,単なる執行猶予判決以上に,Aは,今後3年間社会生活を送る際,十二分の注意が必要とされます。なぜなら,この間に,さらに罪を犯した場合には,再度執行猶予が付される可能性はなく,前刑の「懲役1年6月」に対する執行猶予が取り消され,新たに犯した罪に対する判決,例えば「懲役2年」が加算され,Aは,3年6ヶ月の期間懲役に行かなければならないからです。
3.
Aの社会生活上の注意
Aは,もちろん,3年の執行猶予期間内に犯罪を犯さないという自覚を持ってくれるで しょう。その際,具体的に注意をしておきたい点があります。
①車の運転に注意して下さい。
交通事故は,事故を起こそうと思って起こすものではありま
せん。しかし,交通法規を守るという注意をすることはでき
るはずです。
②生活時間を守ってください。
Aは,今までのように,自分に関わる人たちに甘えることは
できません。Aは,これからの社会生活において,仕事や日
常で約束した時間をしっかり守ってゆくことです。夜間遊び歩
いたりすることは,自らが犯罪に巻き込まれる機会をつくる
ことになります。Aは,少なくとも3年間,より厳しい環境の
中で生きていくことを覚悟してください。