離婚調停における一考察
離婚調停の当事者は,調停に対し,いろいろな意味で不満を漏らす。しかし,調停と いう仕組みは,日本が築き上げた世界から注目される紛争解決制度である。多くの国々では,離婚するには,公的判断を必要とし,当事者の協議による離婚は認められていない。
調停は,公的判断を求める前に,当事者の協議による解決を図るものであり,自らの決断ができるという優れた仕組みである。それ故,調停に関与する人々の役割と限界を認識していただくことで今まで抱いた不満や過剰な期待を払拭して欲しい。
調停に関与する人々
1,当事者……申立人は,調停で積極的に自分の意思を貫き,早期に解決を図りたいとの願望を持っている。他方,離婚 調停の相手方は,多くは,離婚したくないので調停に積極的ではない。時に,無断欠席する。このように,相反する立場の当事者を調停は前提とする。
2,調停委員……男女2名で構成し,当事者からの主張ひいては,愚痴までもよく聞くという役割を果たすとともに,解決の一案を提示する。
当事者から,離婚申し立てに至る経緯,現状の生活,精神状況等具体的内容を確認する。話を聞くことで,当事者のストレス解消をも役割とする。時に,自己の価値判断を押しつけることで,当事者から不興を買う調停委員も存在する。当事者の申し立て内容をよく聞いてくれる調停委員になるよう,委員各自努力している。
3,裁判官……事実を確認し,第三者として法的判断を提示する。
(1)相手方の欠席に対し,出頭勧告の判断を下す。まずは,書記官に欠席当事者に対する連絡をとってもらう。次に,家裁調査官に出頭勧告手続きを要請する。
(2)相手方が,離婚を絶対拒否し話し合いに応ずる可能性がないと判断を下した場合には,調停を不調とする。調停を経ることが,裁判手続きへの前提となる(調停前置主義)。
(3)的確な結論を予測して手続きを迅速に進める。もちろん,調停進行する中で,当事者から具体的事実が判明していくので,進行過程で結論を微妙に調整していくのである。
4,書記官……事務を進行する役割を果たす。
往々にして,申立人は,相手方が欠席することをなぜ自分に伝えてくれなかったのか,連絡があれば無駄な時間を過ごすことはなかったのにと調停手続きに不満を漏らす。しかし,書記官は,調停内容に立ち入って折らず,相手方の欠席如何を申立人に連絡することは調停に混乱をもたらす。裁判官の判断に委ねざるを得ない。
5,家裁調査官……当事者の心理的動向を調査し,調停の俎上にのせる。
子に対する面接交渉等,非常に微妙な判断を下すための調査という役割を果たす。しかも,出頭を嫌う相手方に対し,出頭勧告を行う。
これらの調停に関わる人々の融合の中で,心の整理や生活改善,新たな人生への再出発を準備することができるのである。ただ,一人一人の多様な人生故に,全員の信頼を獲得することもまた困難である。