舟木諒: 2014年6月 Archives

 先日,板橋弁護士と共にNPO法人において,「介護現場におけるリスクマネジメント」と題し,講演を行いました。

 講演内容は,主に①介護事故による責任について,②日常的なリスクヘッジとしての介護記録の意義,記録のポイント,③家族との信頼関係の構築によるトラブルへのリスクヘッジという構成です。

 

 介護事故のリスクを減らすというと,事故を防ぐために高齢者を拘束したり,活動を制限したりという安易な発想に繋がりかねません。しかし,介護は,高齢者の残有能力の活用,尊厳の確保という視点に沿ったものでなくてはなりません。決して高齢者=危険と捉えるべきではありません。

 介護施設での事故は生じてしまうものです。事業者としては,事故が起きないように要求される義務を果たしていれば,法律上の責任は負いません。「事故=法的責任」ではないことをまず確認すべきです。

 

 ところで,最近,実際に介護現場における事故がトラブルを招く例は増えてきていると思います。

 その原因の一つは,家族との認識・知識の差が影響しているのではないでしょうか。 

 利用者や家族にとっては,施設に預けた以上「安全を保証してくれる。ケガなど生じないようにしてくれる」と思いがちです。施設設置基準の「3対1」というものについても,常勤換算というものではなく,夜間でも常に「3人に1人」は職員がいてもらえるという誤解も珍しくありません。

 事業者にとっては,「常識」でも,家族・利用者では「常識ではない」ことはあります。

 事業者側が,この認識の溝を埋めるべき努力をする必要があることは,共感していただけるのではないでしょうか?

 例えば,サービス説明書といったものを作成し,そもそも介護サービスがどのようなものか,高齢者が環境の変化にどういう事態を招きやすいのか,どのような事故のリスクがあるのかという説明をすることが良いと考えています。できる限り,絵の入った簡潔なものがいいでしょう。

 また,利用者が日々どのような生活をしているのか,定期報告をしてはいかがでしょうか。家族の方は,利用者がどのような生活をしているのか,どのようなことに興味を持っているのか,それについて施設がどう配慮してくれているのかが「見える」だけで,施設への信頼が異なるのではないでしょうか。

 現場での具体的な事故において,まだまだ法的な分析・判断がなされていないと思います。

 今後は,介護施設の方との意見交換,介護記録の研修や職員への出張研修などを行いたいと思います。ご興味のある方はお声がけください。

 

 弁護士 舟木 諒 

 弁護士法人龍馬 http://www.houjinryouma.jp/


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