舟木諒
弁護士の舟木諒です。
一般社団法人認知症予防&サポート研究所アンクル(太田市上小林町229-1)において,「介護事故のトラブル対策」と題して,勉強会を行いました。
介護事故が起きた場合でも,施設に責任があるとは限りません。高齢者の自立やプライバシーからすれば,避けられない事故があります。
責任の根拠である安全配慮義務や結果回避義務(過失)の内容は,利用者の状況・能力・事故状況に応じて,個々具体的に判断するしかありません。そのためにも,日ごろから,利用者の状況を正確に把握し,記録するとともに,能力に応じたケアプランを作成・実践していく必要があります。
参加者からは,『「ケアプラン」に利用者のリスクについて,書けば書くほど責任が重くなるのか。あくまでも本人の状況を正確に記載するよう指導しているが,法律的には誤りなのか』といった質問がなされました。
本人の状況は,介護記録によってのみ明らかになるものではありません。家族の証言や受傷時の診断書,認定審査票など,施設以外の証拠により,利用者のリスクは明らかになります。にもかかわらず,ケアプランですら本人のリスクについて考慮していないとなれば,義務を果たしていないとして,責任が認められやすくなることにほかなりません。
責任を負わないためには,義務を果たす,すなわち,本人の状況を正確に把握し,記載し,それに応じたケアを実践することに尽きるのです。
介護事故が起きたときの対応,考え方,リスク管理についての研修については,随時受け付けております。ご要望の方は弁護士法人龍馬まで御連絡ください。
弁護士法人龍馬
弁護士舟木諒です。
「介護事故と法的手続き」第3回の連載が掲載されました。
介護事故が発生した場合に,施設関係者にどのような民事上・刑事上の責任が生じるかという点(前号からの続き)と賠償責任保険など,介護施設に関連する保険の仕組みについてご紹介しています。施設関係者の方は,是非ご一読ください。
弁護士の舟木諒です。
「高齢者安心安全ケア 実践と記録」2014年9・10月号(㈱日総研出版)に, 「介護事故における事業所・職員の法的責任と事故予防」が掲載されました。
同号では,弁護士への相談現場からみえる,「介護事故が裁判へ発展していく要因」について紹介しています。
利用者(家族)と施設では,情報・知識に格差があることを意識した上での十分な「情報提供」をすること,事故時における対応,家族への報告事項の整理など体制を整備しておくことが重要となります。ご興味のある方はご一読ください。
弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/
弁護士の舟木諒です。
1,不当条項の是正が実現されました!
私も加入しているNPO法人消費者支援群馬ひまわりの会は,家庭教師の派遣業者に対し,契約条項の見直しを求めていました。
今般,事業者側から,当会の申入れを受け入れ,自主的に条項を変更したとの連絡を受けました。
消費者の交渉力の弱さに乗じた不当な利益の確保は本来の事業活動による収益ではないことを認識すべきです。
今回の事業者側の早期対応には,敬意を表するとともに,今後も消費者目線での事業活動の展開を願うばかりです。
2, 契約条項は常に有効とは限らない!
「契約条項に書いてある」としても,下記のとおり,法律上「無効」と判断される場合があります。他にも「一切責任を負いません」というような条項も消費者契約では,無効とされるものです。
このような条項を放置しておけば,未来永劫,消費者被害が生じる事になりかねません。「これはおかしいのでは?」という素朴な疑問を持たれた方,情報をご提供ください。
今回申し入れを行った具体的な内容については,以下のとおりです。若干専門的になりますので,ご興味があれば。
1,中途解約・違約金の規制
法律上,家庭教師派遣等の「特定継続的役務」については,消費者から中途解約をすることが認められております。また,当該契約を消費者が中途解約した場合に,事業者が取得できる違約金については,上限が定められております。
具体的には,解約時期が特定継続的役務の提供開始後である場合,①提供された特定継続的役務の対価に相当する額及び②通常生じる損害の額の合計額に法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える違約金条項は無効とされております。
そして,①の特定継続的役務の対価に相当する額は,「契約時」での単価が上限と解されており,契約時点の単価を上回る金額で再計算をすることは許されておりません。
2,解約時の単価を変えるとは?
例えば,家庭教師派遣の代金が1年コースでは12万円(1か月あたり1万円),6か月コースでは9万円(1か月あたり1万5000円)のように契約期間によって,1か月あたりの単価が異なるとします。
Aさんが,1年契約を締結した後,6か月で解約した場合,①「提供された特定継続的役務の対価」は,契約時の単価を元に6万円(1か月1万円×6)となるはずです。
ところが,事業者によっては,解約時点では,6か月しか経過していないことに着目し,あたかも当初から6か月コースを締結したものとみなし,1か月あたり1万5000円の単価で計算する業者がいます。
そのため,提供された役務の対価は,9万円(1万5000円×6)と計算され,差額の3万円が請求されたり,消費者が一括払いで先に支払っていた場合には,3万円しか返還されなかったりすることになります。
このような解約時における単価を変更する規定は,特定商取引に関する法律によって,無効と考えられます。
今回は,上記のような規定について,是正を求め,それが実現したものでした。
今後も,このような不当条項の申し入れ活動を継続して参ります。
弁護士法人龍馬HP
先日,板橋弁護士と共にNPO法人において,「介護現場におけるリスクマネジメント」と題し,講演を行いました。
講演内容は,主に①介護事故による責任について,②日常的なリスクヘッジとしての介護記録の意義,記録のポイント,③家族との信頼関係の構築によるトラブルへのリスクヘッジという構成です。
介護事故のリスクを減らすというと,事故を防ぐために高齢者を拘束したり,活動を制限したりという安易な発想に繋がりかねません。しかし,介護は,高齢者の残有能力の活用,尊厳の確保という視点に沿ったものでなくてはなりません。決して高齢者=危険と捉えるべきではありません。
介護施設での事故は生じてしまうものです。事業者としては,事故が起きないように要求される義務を果たしていれば,法律上の責任は負いません。「事故=法的責任」ではないことをまず確認すべきです。
ところで,最近,実際に介護現場における事故がトラブルを招く例は増えてきていると思います。
その原因の一つは,家族との認識・知識の差が影響しているのではないでしょうか。
利用者や家族にとっては,施設に預けた以上「安全を保証してくれる。ケガなど生じないようにしてくれる」と思いがちです。施設設置基準の「3対1」というものについても,常勤換算というものではなく,夜間でも常に「3人に1人」は職員がいてもらえるという誤解も珍しくありません。
事業者にとっては,「常識」でも,家族・利用者では「常識ではない」ことはあります。
事業者側が,この認識の溝を埋めるべき努力をする必要があることは,共感していただけるのではないでしょうか?
例えば,サービス説明書といったものを作成し,そもそも介護サービスがどのようなものか,高齢者が環境の変化にどういう事態を招きやすいのか,どのような事故のリスクがあるのかという説明をすることが良いと考えています。できる限り,絵の入った簡潔なものがいいでしょう。
また,利用者が日々どのような生活をしているのか,定期報告をしてはいかがでしょうか。家族の方は,利用者がどのような生活をしているのか,どのようなことに興味を持っているのか,それについて施設がどう配慮してくれているのかが「見える」だけで,施設への信頼が異なるのではないでしょうか。
現場での具体的な事故において,まだまだ法的な分析・判断がなされていないと思います。
今後は,介護施設の方との意見交換,介護記録の研修や職員への出張研修などを行いたいと思います。ご興味のある方はお声がけください。
弁護士 舟木 諒
弁護士法人龍馬 http://www.houjinryouma.jp/