弁護士法人 龍馬: 2011年9月 Archives

私のライフワーク

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【タワー】2011-08-30 15.32.47.jpg 高齢者をとりまく法律問題につき,私の問題意識を整理してみた。
1.自分が亡くなったあとの問題は,遺言による相続により,解決の指針ができる。
遺言中に遺言執行者を指定することで,相続人だけでなく第三者の判断を得ることができる。
 しかし,まだまだ,有効活用されていないのが現状である。

2.自分がもう回復困難であると判断されてから,亡くなるまでの間の問題は,事前指示書により,家族もその周囲も判断に迷いがなくなる。
事前指示書があれば,終末期医療に伴う家族の経済的精神的負担が軽減され,過剰な医療行為も防ぐことができる。
 肝心なことは,本人が延命のための苦痛を伴う医療から解放され快適なケアを受けることができる点にある。
 しかし,事前指示書を残すことができる方は,家族があり,経済的余裕がある方であり,家族もない,経済的余裕もない人たちには,生きることが精一杯であり,ターミナルケアに対する問題意識すらない。

3.可能性としては大いにあり得る認知症期には,任意後見契約あるいは,法定後見により,後見人による身上監護・財産管理ができれば,高齢者というだけで,消費者被害を受けることはないし,高齢者虐待も避けることができる。

(1) ただ,後見業務を行う担当者やその監督を行う裁判所には,高齢者本人のためではなく,推定相続人のために後見を行っているきらいがある。高齢者の家族が後見になっている場合には当然ともいえる結果である。つまり,高齢者の財産を減少させない,散逸させないことにあくせくしているだけであり,高齢者本人が快適な生活を送ることに目が向けられていないのである。そこで,高齢者と当職のような専門家が任意後見契約を締結する際,高齢者本人が快適な生活を送るための契約内容を施すことで,財産管理だけでない快適な身上監護が可能となってくる。

(2) 次に,高齢者消費者被害問題は,被害回復が困難であることに尽きる。悪質業者は,被害請求に対し,対応することがないばかりか,仮に裁判をしたところで,実体がなく,執行すべき対象財産もない。それゆえ,後見がつけば,財産管理がなされているし,高齢者が信販契約をしたところで,取消無効とすることができる。

(3)高齢者虐待は,密着した家族関係や密室化した施設関係者との間で発生してしまうものであるから,第三者である後見人が介在することで,未然に防止することができる。 

4.高齢者をとりまく法的支援をするために,このような問題意識とその視点をもって,解決指針を提示していきたい。

その第一の指針は,家族のいない経済的余裕のない高齢者に対しては,市民後見人の養成し,その支援を行っていくことである。

また,“おひとりさま”の高齢者に対しては,任意後見による快適な生活の支援のプランを提示することである。

そして何よりも,終末期医療に対して,高齢者が認識理解できるよう,事前指示書を確かなものとさせたい。