ユーザー (#2)2007年5月 Archives

鑑定について…その3

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「鑑定の現状と問題点」

*「我が国の場合、鑑定人経験のある医師、建築士等の専門家にとって、裁判所の鑑定とは、裁判所から投じられた問題について格別のルールも設定されない中で、孤独に悩みながら、多大な労力を投じて鑑定書を作成し、その後忘れられたころになって、裁判所の証言台に呼び出されて、何も見ずに訊かれたことだけにイエス、ノーで答えよ、などを強いられるという、労多くして報われることのない、不愉快な体験として記憶されることが極めて多い。」と言われている。

1、従来の鑑定方法
・従来は、欠陥という言葉の意味の把握と、その法律的判断基準について,明確な把握が行われていなかった。欠陥判断の基準を示すことなく、また法律的な欠陥判断であることを明確に自覚することなく調査鑑定を求めたため、調査鑑定を求められた者の随意な判断基準による調査鑑定とならざるを得なかった。

2、鑑定人の選定と鑑定に依頼方法について
・争点整理表を添付して、なぜ、先生が鑑定人に選任されたのか説明の上、依頼すべき。

3、適切な鑑定人候補者の確保について
・建築士によって、例えば工法別に、経験の差が有る。
 マニュアルの必要性。

4、鑑定事項の定め方について
調査報告書と同様。
・従前は、原告と被告の鑑定事項をそのまままとめて丸投げみたいな形で整理せずに鑑定依頼していた例がある。
・民訴規則129条4項
今後は、裁判所の争点整理の結果に基づいて、鑑定事項がいいのかどうかを吟味するべき。
・鑑定人に事前に確認をとり、本当にこの鑑定事項で適切な鑑定ができるかどうかを確かめる必要がある。

*専門的知見を得るにつき、付調停と鑑定との振り分けも一方策と考える。

・振り分けの理由:

ⅰ、構造性能や対候性能の場合
欠陥住宅訴訟は、消費者対業者という異質な対立をもつものの間の紛争である。特に欠陥住宅訴訟のなかでも基礎や骨組みの手抜き、いわゆる構造の手抜きは、結論として取り壊し建て替えるほか新築契約が前提とするような建物には戻らない。だから、食うか食われるか、オール・オア・ナッシングの戦いになる。
異質なものの間の決定的なダメージを与える戦いには譲り合いが前提になっているから調停の妥当性が乏しい。

ⅱ、美匠や仕上げの欠陥の場合
この欠陥判断は非常に主観性が高く、司法判断に親しまない。美匠や仕上げの欠陥は,調停を利用することを勧めたい。また、美匠や仕上げの欠陥については業者は割合消費者の要求に乗るようである。

①、調停手続の活用
・調停に付すべき事件
建具の調整不備、一部内装の汚損や仕上げの問題、設備の欠陥等、比較的補修費用の小さい場合
*建築士調停委員の専門的知識を得て、争点整理を行う。
②、鑑定手続の活用
基礎や構造体に係わる欠陥の場合、雨漏り等の欠陥以前の瑕疵の場合など
ⅰ争点整理手続段階からの鑑定人の関与
ⅱ適切に鑑定事項を確定させるための工夫
*裁判所が鑑定事項を定める(民訴規則§129Ⅳ

1.はじめに

ⅰ、欠陥住宅訴訟でいう欠陥とは
「法律上許容されるべき最低限の基準」という「法律の物差しから見た欠陥」
ⅱ、欠陥を性能の欠陥としてとらえることの必要性
欠陥現象と欠陥原因とを区別せず、漫然と欠陥現象だけが欠陥であるかのような錯覚をしていることの裏返しが、欠陥を現象面だけで捉えて「性能の欠陥」であることを理解していない。
ⅲ、大切なことは、前述したように欠陥現象と欠陥原因の区別をよく理解し、欠陥は性能の問題だという認識が必要なのである。
相当な耐候性能がないから雨漏りがするのであり、相当な構造性能を持たないから仮定荷重値の地震にあえば家がつぶれるおそれがある。

2.訴訟提起前の弁護士の活動状況について

①依頼者から話を聞く。
*技術紛争である。
ⅰ、事情訴訟から技術訴訟に脱皮させる。
ⅱ、そのためには欠陥原因事実を特定する。
ⅲ、また欠陥原因事実の特定に努力する。
ⅳ、そして、どのような基準で欠陥という法的判断を与えるのかということに努力する必要がある。
②契約書及び設計図書、建築確認通知書、公庫仕様書などの確認。
*建築確認通知書については、業者が保持して建築主に渡していないことが多い。
③建築士と現場確認。
*依頼を断るか、調停申立か、あるいは訴え提起かの選択。

④調査報告書の依頼・作成。
・報告書の項目
ⅰ、位置
欠陥現象または欠陥原因の場所を特定する。
ⅱ、現状
調査者本人が確認した欠陥現象を客観的に記載する。
ⅲ、原因
確認した欠陥現象の原因を記載する。
ⅳ、所見
当該原因はどのような根拠法令や技術基準に反するか、本来どのような施工すべきか、理論上なぜそのように施工すべきか、その欠陥によってどのような弊害が生ずるか等について記載する。
ⅴ、補修方法
適切な補修方法を指摘する。新築建物であることから、性能上はもちろん外見上も新築建物に相応しい内容の補修とすることを前提とする。取り壊し建て替え以外に適当な方法がないときは、その理論的根拠とともにその結論を記載する。
ⅵ、補修費用
公刊の積算資料に基づいて補修費用を記載し、また工期を記載し、できれば工程表も作成する。補修費用には経費を計上する。

・欠陥判断の基準
建築士には次の基準に該当する箇所を指摘させる。
ⅰ、設計図書を下回る施工
ⅱ、建築基準法、同施行令、その他建築関係法令に違反するかまたは下回る施工
ⅲ、住宅金融公庫の定める共通仕様書を下回る施工
ⅳ、建築学会その他権威ある建築団体の定める技術基準を下回る施工
ⅴ、以上のような明文化された基準がなくても、標準的な工法、慣行上認められてきた工法に反する施工
⑤調停申立あるいは訴え提起。

1,平成12年4月1日から「住宅品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が施行された。この「品確法」は,阪神淡路大震災の際,隣の家は建っているのに,自分の家は「欠陥住宅」だったためにつぶれて家族か亡くなってしまったりけが人が出てしまったという事件が契機であった。
 つまり,住宅の価値の根本は,居住者の生命身体を守るための基本構造がしっかりしていることにある。私たちが,住宅を求める際,間取りやデザインにのみ目を向けがちであるが,耐震性や耐火性などにも,選択基準を持たなければならない。
 そのために,住宅の性能保証基準を定めた法律が「品確法」である。その柱は,
(1) 基本構造部分の10年保証
(2) 住宅性能表示制度
(3) 住宅専門の処理機関の設立
 である。
  しかし,施工後,7年間経過しているにも関わらず,消費者である私たちはもとより,建築業者や,プレハブメーカーの営業マンでさえ,品確法の知識が行き渡っているどころか,知らない状況にある。
2,そもそも住宅の性能を評価するにあたり,
登録住宅性能評価機関(群馬県では(財)群馬県建築技術センターなど)が,
① 設計図書の作成
② 設計図書の評価
③ 設計段階の住宅性能評価書を交付
④ 施工段階・完成段階の検査
⑤ 完成段階の住宅性能評価書(引渡し)を交付する。
  因みに,新築住宅の設計住宅性能評価書交付戸数と住宅着工戸数の比較をすると,平成17年4月~平成18年3月では,住宅着工戸数が1,248,807戸に対し,設計住宅性能評価書交付戸数が195,582戸であり,その割合は15.7%に増加している。
 同様に,建設住宅性能評価では,平成17年4月~平成18年3月までの1年間,117,922戸の評価書の交付がなされている。
 即ち,年間の住宅着工戸数のうち,1割強が評価住宅と言えるに過ぎない(群馬県建築技術センターは,ここ半年間0件)。
 また,既存住宅に係る評価実績は,平成17年4月~平成18年3月までの1年間,評価書の交付は599戸に過ぎないのである。
 そして,指定住宅紛争処理機関の紛争処理の状況に至っては,過去5年間において,あっせん成立1件,調停成立30件に過ぎない(群馬弁護士会住宅紛争審査会は,未だ0件)。
3,以上のように,品確法における住宅性能表示制度は,いまだ周知されておらず,途上段階といえる。まず,建築する側が理解する必要があり,利用していくことであろう。
                                  以上