市民後見人養成・支援と龍馬ネットワーク

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第1 市民後見のあり方
 

 厚生労働省は,2012年4月1日,全市町村で市民後見推進事業を開始する。認知症高齢者や一人暮らし高齢者の増加に伴い,成年後見制度の必要性は一層高まってきており,その需要はさらに増大することが見込まれる。また,今後,成年後見制度において,後見人等が高齢者の介護サービスの利用契約等を中心に後見等の業務を行うことが多く想定されるからである。
 こうした成年後見制度の諸課題に対応するためには,弁護士などの専門職後見人がその役割を担うだけでなく,専門職後見人以外の市民後見人を中心とした支援体制を構築する必要がある。

 この市民後見人制度推進にあたり,国及び地方公共団体は,公的費用負担の下で,市民後見人の養成に止まらず,支援・監督等の一貫した体制を構築し,中核となる拠点(センター)を設置・運営すべきであり,そのポイントは次の6点にある。
①公的責任の下での市民後見制度整備 
②中核拠点設置による養成・支援・監督など一貫した組織的支援体制の整備
③市民後見人養成における研修内容の充実
④中核拠点における専門職の連携の必要性
⑤市民後見人の積極的役割,及び地域社会への制度の啓発活動
⑥成年後見ネットワーク構築及び地域権利援護システムの確立

第2 龍馬ネットワーク


 1.ところで,私は,昨年(2010年1月6日),弁護士法人龍馬を立ち上げ,その際,龍馬ネットワークを構築した。龍馬ネットワークメンバーは,医師・社会福祉士・司法書士・税理士・公認会計士などで構成される。同年7月1日,冊子「快適に老いる!」を発行し,高齢者問題全般を,ライフワークとした。
 上記冊子は,以下の内容を中心としている。


  第二章 “龍馬”からのススメ…認知症になる前に
   一 事前指示書
      二 ホームロイヤー契約
        三 財産管理契約
        四 任意後見契約
        五 遺言
  第三章 新たなしくみ…会社を守る,老後資金確保
       一 遺言信託・事業承継
       二 リバースモーゲージ
  第四章 相続法の仕組み…争族を防ぐ知識
       一 相続
       二 遺産相続
  第五章 高齢者を守る仕組み
       一 消費者被害
       二 虐待対応
       三 成年後見

 2.しかし,弁護士1人が成年後見業務を行う件数は非常に限られている。そのため,私は,自ら得た成年後見業務に関する知識・経験を活用して,高齢者問題の増大に応じ,広く普及させたいと考えるようになった。
 そして,2011年7月,高齢者問題を取り扱う専門家のネットワークをつくり,かつ,冊子で啓蒙普及をしてきたことが,この市民後見人養成支援業務に結実されてきつつある。
 形成してきた龍馬ネットワークによって,第1で述べた市民後見制度推進のポイントを十二分にクリアできるからである。

①公的責任の下での市民後見制度整備
 私は,厚労省のモデル事業の1つである玉村町市民後見人推進事業にオブザーバーとして参加している。玉村町の責任の下で,市民後見制度が整備されつつあり,東京大学の政策ビジョン研究センターによる市民後見人の育成がなされてきた。
 ただ,地域に根ざした市民後見推進事業とは異なるため,地域における後見支援組織の整備,すなわち,具体的な市民後見人への支援・監督体制に欠ける懸念がある。
ここでも,地域の弁護士として,このモデル事業の成功への協力がいかにできるか模索中である。
 
②中核拠点設置による養成・支援・監督など一貫した組織的支援体制の整備
 龍馬ネットワークによる,市民後見人育成・支援事業を行うにあたり,既存のNPO法人認知症ケア研究研修連絡協議会に協力を求めた。具体的には,2012年2月,同NPO法人の定款変更により,認知症ケア専門士の育成とともに,市民後見推進事業を担う団体として活動を開始することである。
 その拠点は,弁護士法人龍馬ぐんま事務所に置き,市民後見人に就任した方々が後見業務を行う際に生じた問題解決への支援並びに,監督を行う。

③市民後見人養成における研修内容の充実
 龍馬ネットワークメンバーは,高齢者を守るために,消費者被害,虐待対応,成年後見などの対応が可能な経験豊富な専門家である。さらに,東京大学の政策ビジョン研究センター特任助教宮内氏や地域の高崎健康福祉大学教授金井氏の協力を得る。つまり,実務と理論の第一人者によるメンバーにより,市民後見人養成研修を行う予定である。

④中核拠点における専門職の連携の必要性
  すでに述べたとおり,市民後見人養成支援事業を行うNPO法人の拠点に,後見業務の専門職が参集している。市民後見人となった人との専門職との連携は容易となっている。

⑤市民後見人の積極的役割,及び地域社会への制度の啓発活動
 養成した市民後見人には,特に,市町村申立による後見人に就任できるよう,積極的支援を行っていくので,公的費用の下で育成した市民後見人が市町村の高齢者問題解決に積極的役割を果たしていくことになる。さらに,地域に根ざした方々が市民後見業務を行うことになるので,同制度の啓発を兼ねることになる。

⑥成年後見ネットワーク構築及び地域権利援護システムの確立
 すでにその業務を確立した既存の団体や組織が,新たな共通の業務に向けた体制を組むことは困難である。龍馬ネットワークを中心としたNPO法人は,成年後見ネットワークをすでに構築しており,かつ,認知症ケア専門士を育成する組織とタイアップすることにより,対象者である認知症高齢者に対する地域権利擁護システムとして最適の団体となっている。それゆえ,龍馬ネットワークを中心としたNPO法人が,地方公共団体から市民後見推進事業の委託を受けることにより,地域権利擁護システムが確立する。

                                                                                                   以上

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This page contains a single entry by published on 2011年12月 3日 13:41.

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