「後見制度支援信託」よりも親族後見人に対する十分な指導と研修をすべきである

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最高裁は,成年後見人が,被後見人(成年後見の決定を受けた人)の財産を横領する事件が多発している現状を踏まえ,早ければ年末にも被後見人の財産を信託銀行に預ける制度の導入をしようとしている。

 

判断能力が欠けている人のために選任する後見人は,財産に関する代理権が認められるため,後見人が財産を使い込んでしまうケースが多発している。使い込まれた財産を取り戻すことは難しく,こうした横領を防ぐ仕組みづくりが課題になっていた。確かに,親族後見人による不祥事の発生が看過できない状況である。

 

しかし,最高裁が導入しようとしている「後見制度支援信託」は,高齢者の財産を囲い込みし,本人のために使わせないものであって,本来,本人の生活の質を高めるために,本人のお金を活用する成年後見制度とは,異質の制度である。上記不祥事を解決するためには,裁判所の後見実務に対する抜本的解決が必要である。例えば,親族後見人の選任時,初期研修を充実させると共に,選任後も親族後見人に対し,専門職による定期的研修を行うべきである。

 

なぜなら,家庭裁判所が後見人の役割等について,十分な指導を行わず,後見人となった親族が家族の財産と被後見人の財産を峻別する必要性を理解せず,財産を費消したというものであり,親族後見人らの理解不足が根本的原因と考えられるからである。

 

最高裁は,成年後見制度の中心をあくまで財産管理と捉えているため,高齢者本人の資産散逸にのみ,目配せしようとする。しかし,それは,推定相続人のための,成年後見と堕してしまい,高齢者のための残存能力を活用させるための本来あるべき成年後見の姿から,遠く離れたものであろう。上述したとおり,高齢者の財産は高齢者の生活の質を高めるために用いられるべきであり,その後見人の役割を指導し,且つ,研修させることが,あるべき後見制度に期待されている。

 

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/


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