成年後見制度に関する取り扱いについて
成年後見人は,その事務の一環として,被後見人の財産を確保し,または他に財産がないかを調査するなど,被後見人に代わって本人の財産を管理する業務を担っています。
そのため,成年後見人は,被後見人名義の預金口座が存するとき,金融機関等に対して後見人が選任されたことの届出を行い,また,判明している口座以外に預金取引が存すると窺われる場合には,その取引履歴等の開示を求めます。
しかし,成年後見人が,このような手続をとる際,金融機関によってその取扱いは様々です。
実際に,成年後見人が各種届出を行う際,金融機関から以下のことを求められました。
① 被後見人の署名や取引印の押印を必要とする。
しかし,成年後見人は,裁判所によって選任され,本人に代って財産を管理する権限を付与されます。とすれば,届出において被後見人の署名や取引印の押印は必要ないと考えます。
成年後見制度の申立をする以上,多くの場合,被後見人が自署することは困難です。取引印を紛失していたりすることもあります。紛争性の高い事案では,親族が取引印を引き渡さないこともあります。実際問題として,被後見人の署名や取引印の押印は不可能なのが現状です。
② 成年後見人個人の実印とその印鑑証明書を必要とする。
また,金融機関によっては,本人確認のため,成年後見人個人の実印と実印の印鑑証明書の添付を求めます。
しかし,紛争性の高い事案等を担当することの多い弁護士の場合,自宅住所の記載された個人の印鑑証明書の提出は業務妨害等のリスクが考えられます。
また,成年後見人であることを証明する登記事項証明書は事務所住所が記載されており,印鑑証明書上の住所(自宅住所)と登記事項証明書記載の住所(事務所)とが一致せず齟齬が生じます。
そのため,金融機関に対しては,これに代わるものとして,弁護士の職印と弁護士会発行の印鑑証明書(事務所住所)で足りる旨説明し,同印鑑証明書を添付しました。
現在,日本では急速に高齢化が進んでおり,今後,益々成年後見制度が利用されることが予想されます。このような高齢化社会に対応するため,成年後見制度を利用しやすく,また,成年後見人が迅速に財産管理等の事務を遂行できるような取扱いが求められます。
弁護士 星野 啓次
弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/