ゼミと出前講座

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第一,消費生活相談員ゼミナールを行いました。

 

1,相談員は,消費生活相談という特定分野の専門的知見を有する専門職である。

消費者関連法の改正が毎年のように頻繁に繰り返され,新手の消費者被害が次々と登場するなど,絶えず専門的知見の向上に向けた実務的な研修が必要な職務である。それゆえ,平成22年度は,前年度の前橋地区の研修に続いて,高崎地区8名の研修と太田地区8名の研修をすることになった。

 

 2,私とすれば,新たな消費者関連法に関する知識の伝達に留まらず,現代社会のひずみから生ずる問題意識を共有したいと願っている。

 今回のメッセージは,「脆弱な消費者」の存在の是認である。すなわち,脆弱な消費者である「自己」つまり個々人の責任よりも「社会」としての責任・役割を求めていきたい。消費者被害の課題でいえば,個々人の能力を高めることで被害を防ぐこと以上に,いかに被害を起こさせない社会を構築するか,不運にも被害に遭ってしまった場合にいかに周りの人が助けてあげられるか,を重視した社会を築き上げることである。

 

 3,特に,一人暮らしの高齢者は,脆弱な消費者の典型である。齢を重ねるにつれ,取引に対する判断能力が劣化していく。高齢者から,消費生活相談員に対し,直接被害救済のためのヘルプコールを求めることはできない。それゆえ,高齢者の周辺にいる人がその状況を確認し,ヘルプコールを消費生活センターへつなげなければならない。そして,相談員も個別案件の解決を通じて,消費者被害をもたらす悪質な業者に対する包囲網を築き上げるべきであろう。

 

 4,私は,新たな消費者関連法の研修をきっかけに,この消費者被害の解決手だてを明確に伝えていきたいと願っている。

 

第二,高齢者虐待防止出前講座

 

 1,高齢者虐待防止出前講座が,社会福祉士・司法書士及び弁護士で構成される高齢者虐待対応専門職チームでこの秋から行われる。高齢者虐待に対応する責任部署は,市町村である。しかし,現場において,高齢者虐待が知見される状況に至っても,解決の手だては見いだせない。あえていうなら,市町村において,手をこまねいている状況なのである。

 

 2,この状況を打破するためには,専門職チームが市町村に対し,高齢者虐待防止法に基づき,相談通報等を受理すべき申し入れを行うという手だてを尽くすことになる。高齢者虐待防止法7条から明らかなとおり,市町村には通報を受理しない権限がない。通報者が匿名であっても,必ず受理しなければならない。受理により,高齢者虐待の対応がはじまるのである。

 

 3,今年度の高齢者虐待防止出前講座は,専門職チームとして,はじめて関わる課題となる。確かに,弁護士にとって,高齢者虐待に関わる経験は,数少ない。しかし,高齢者虐待対応の窓口となる市町村に対し,法的に構成した申立ができる専門職として弁護士が関わることは有効であろう。

 

                                 以上

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This page contains a single entry by published on 2010年9月18日 14:27.

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