欠陥住宅訴訟について…その1
1.はじめに
ⅰ、欠陥住宅訴訟でいう欠陥とは
「法律上許容されるべき最低限の基準」という「法律の物差しから見た欠陥」
ⅱ、欠陥を性能の欠陥としてとらえることの必要性
欠陥現象と欠陥原因とを区別せず、漫然と欠陥現象だけが欠陥であるかのような錯覚をしていることの裏返しが、欠陥を現象面だけで捉えて「性能の欠陥」であることを理解していない。
ⅲ、大切なことは、前述したように欠陥現象と欠陥原因の区別をよく理解し、欠陥は性能の問題だという認識が必要なのである。
相当な耐候性能がないから雨漏りがするのであり、相当な構造性能を持たないから仮定荷重値の地震にあえば家がつぶれるおそれがある。
2.訴訟提起前の弁護士の活動状況について
①依頼者から話を聞く。
*技術紛争である。
ⅰ、事情訴訟から技術訴訟に脱皮させる。
ⅱ、そのためには欠陥原因事実を特定する。
ⅲ、また欠陥原因事実の特定に努力する。
ⅳ、そして、どのような基準で欠陥という法的判断を与えるのかということに努力する必要がある。
②契約書及び設計図書、建築確認通知書、公庫仕様書などの確認。
*建築確認通知書については、業者が保持して建築主に渡していないことが多い。
③建築士と現場確認。
*依頼を断るか、調停申立か、あるいは訴え提起かの選択。
④調査報告書の依頼・作成。
・報告書の項目
ⅰ、位置
欠陥現象または欠陥原因の場所を特定する。
ⅱ、現状
調査者本人が確認した欠陥現象を客観的に記載する。
ⅲ、原因
確認した欠陥現象の原因を記載する。
ⅳ、所見
当該原因はどのような根拠法令や技術基準に反するか、本来どのような施工すべきか、理論上なぜそのように施工すべきか、その欠陥によってどのような弊害が生ずるか等について記載する。
ⅴ、補修方法
適切な補修方法を指摘する。新築建物であることから、性能上はもちろん外見上も新築建物に相応しい内容の補修とすることを前提とする。取り壊し建て替え以外に適当な方法がないときは、その理論的根拠とともにその結論を記載する。
ⅵ、補修費用
公刊の積算資料に基づいて補修費用を記載し、また工期を記載し、できれば工程表も作成する。補修費用には経費を計上する。
・欠陥判断の基準
建築士には次の基準に該当する箇所を指摘させる。
ⅰ、設計図書を下回る施工
ⅱ、建築基準法、同施行令、その他建築関係法令に違反するかまたは下回る施工
ⅲ、住宅金融公庫の定める共通仕様書を下回る施工
ⅳ、建築学会その他権威ある建築団体の定める技術基準を下回る施工
ⅴ、以上のような明文化された基準がなくても、標準的な工法、慣行上認められてきた工法に反する施工
⑤調停申立あるいは訴え提起。